コラム「人間と生活環境」第2回 『日傘で暑さを防げるの?』

No.2 2020年7月

渡邊 慎一(大同大学)

 2018年は「災害級の暑さ」と表現されるほど暑い夏でした。この年の5月から9月の間に、熱中症により救急車で運ばれた人は全国でなんと9万5千人強、そして亡くなられた方が160人もいらっしゃいました。これはもう社会問題といってよいと思います。

 では、熱中症を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか?当然ですが、暑さを避けることが重要です。屋外では日陰に入れば涼しくなります。みなさんも炎天下に建物の陰や木陰に入って涼んだ経験があるでしょう。でも、いつでも建物や樹木があるとは限りませんし、日陰は太陽の位置によっても動いていきます。

 そこで、「日傘」の登場です!日傘は比較的リーズナブルに購入できますし、なにより持ち運ぶことができます。別の言い方をすると、日傘は「持ち運びできる日陰」なのです。最近では男性も日傘を使う時代で、「日傘男子」なんていう言葉も生まれました。

 さて、日傘を差すと本当に暑さを防ぐことができるのでしょうか?実験結果を示す前に、まず暑さの程度をどうやって表すのか説明が必要ですね。暑さは気温だけでは決まりませんので、特別な指標が必要になります。「暑さ指数」です。暑さ指数は、気温と湿度と風速と、そして放射熱の影響をまとめたものです。単位は気温と同じ「℃」が使われますが、気温とは違うので気をつけて下さいね。

 ある夏の晴れた日に、黒・白・茶色の3種類の日傘を使って実験をしました。さぁ、実験結果です!黒の日傘が最も暑さを防ぐ効果が高く、暑さ指数が最大で2.9℃低下しました。たった3℃か〜、と思うかもしれませんが、熱中症は暑さ指数が3℃上がるごとに危険度が1ランク上がります。ですから、2.9℃下がるということは、熱中症の危険度を1ランク下げられるということになります。例えば、危険度が「厳重警戒」から「警戒」になるということです。

 では、黒日傘と白日傘、どちらが暑さを防いでくれるのでしょうか?黒日傘は暑さ指数を平均で1.7℃低下させ、白日傘は0.9℃低下させました。したがって、この結果をみると、黒日傘の方が暑さを防ぐ効果が高いということになります。しかし、別の素材の日傘で実験してみると、白日傘の方が暑さを防ぐ効果が高いという、まるで逆の結果になったのです。したがって、白か黒かという色だけの問題ではなく、日傘の効果には素材も影響するということなのです。奥が深いですね。日傘を上手に使って暑さを防ぎましょう!

実験では、日傘を使うと暑さ指数が最大で2.9℃低下しました。
日傘の効果は、白か黒かという色だけでなく、素材も影響します。

【参考文献】

  1. 川嶋摩奈,犬塚加奈,渡邊 慎一,石井 仁 2015:日傘によるWBGT低減効果の実証的研究,,第39回 人間−生活環境系シンポジウム報告集,57/60.
  2. Watanabe, S., Ishii, J. 2017: Mitigation of pedestrian heat stress using parasols in a humid subtropical region. International Journal of Biometeorology, 61(11), 2009/2019.
  3. 渡邊慎一,石井仁 2017:日傘による暑熱緩和効果,日本建築学会 環境工学委員会 熱環境運営委員会 第47回 熱シンポジウム,79/84.
  4. 渡邊慎一,石井仁 2020:日傘による暑熱環境緩和効果の実証的研究,日本生気象学会雑誌,56(4),133/144.

イラスト:浦川京子