コラム「人間と生活環境」 第11回 『睡眠と換気』

No.11 2021年7月

都築 和代(関西大学)

 5月の連休が終わるとそろそろ夏だと感じ始めます。梅雨の合間の暑さに加え、夜間も寝具をはねのけていることを自覚し始めるからです。8月に入ってからのエアコンは、もう夏だから、と躊躇なく使えますが、この時期のエアコンは使おうか使うまいか悩ましい問題です。電気代も気になります。真夏でも人によっては寝冷えによる体調不良を嫌い、タイマー設定によるエアコン使用の割合が7割を超すという報告もあります。

 コロナ禍で三密を避けるのに加え、室内では積極的な換気が奨励されています。換気とは清浄な外気と室内の汚れた空気を入れ換えることです。換気は窓開けによる風圧力や屋内外の温度差を利用する自然換気と換気扇を利用して強制的に空気を入れ換える方法があります。

 2003年以降、改正建築基準法が施行され、換気設備の設置が義務付けられました。住宅の居室には、換気回数0.5回/時以上の24時間換気システム等が設置されるようになりました。換気の際に捨てられてしまう室内の熱を回収し、取り入れる外気に伝えてから、室内に取り込むことが可能な熱交換のついた換気設備を使用するならともかく、屋外の空気がそのまま室内に入ってくることを止めることは不可能です。近年、都市の温暖化が進み、夜になっても25℃以下にならない熱帯夜が続くことが当たり前になっています。エアコンのタイマーが切れた場合、換気によって外気が室内に入ってくることにより、冷房で冷えた寝室の空気温度は徐々に上昇を始め、湿度90%にもなる湿った空気が寝室の中に入り込みます。すると、せっかく眠れていたのに、暑さと湿り気により目が覚め、もう一度エアコンのスイッチを入れる羽目になります。寝る時に暑さを感じなくなるまでは、適切な冷房温度を設定して、エアコンを入れ続けることをお勧めします。

【参考文献】

  1. 都築和代 2015:季節の室内温熱環境と睡眠,第39回人間-生活環境系シンポジウム報告集, 109.
  2. Tsuzuki K., et al. 2015: Effects of seasonal illumination and thermal environments on sleep in elderly men, Building and Environment, 88, 82/88.

イラスト:浦川 京子