コラム「人間と生活環境」 第22回 『人は乾燥を感じるか?』

Vol.22 2022年7月

高田 暁(神戸大学)

 冬には、屋外の空気が乾燥しており、室内の湿度も低くなりがちです。私たちは、このことを知識として知っていますが、湿度が低くなっていることを体で感じ取れているのでしょうか。

 相対湿度10%という極端に低い湿度の実験室を用意し、そこで人に過ごしてもらい、「どれくらい乾燥を感じますか」と尋ねたところ、「少し乾燥する」と答えた人はいましたが、「乾燥する」「とても乾燥する」とはっきりと答えた人はごくわずかでした。この実験の結果を見ると、人は本当に乾燥を感じるのだろうか?と疑問になります。この実験に参加する人には、その部屋の湿度がいくらなのかは知らせませんでしたが、もし「この部屋の湿度は10%ですよ」と知らせていたら、違った結果になったのかもしれません。

 一方で、湿度が低い場合に、皮膚表面の含水率が低くなること、まばたきが増えることなどが実験によりわかってきています。その人自身がなんとも思っていなくても、体は湿度が低いことに対して、確かに反応しています。ただし、皮膚含水率が低い、まばたきが増えるといっても、機械で測ったらそうなったというだけで、そのことが人にとってどのくらい重要なことなのかは、わかっていません。

 湿度が低いとき、加湿器を使って湿度を上げようという発想になりがちですが、加湿は結露・カビの原因となり、かえって室内環境を悪化させる可能性があります。また、加湿には電気などエネルギーの消費が伴います。よって、加湿するとしても必要最小限にとどめることが重要です。では、保つべき最低限の湿度がどのくらいなのか?残念ながら、これがまだはっきりとわかっていません。人にとって最小限保つべき湿度を明らかにする研究が、必要です。

【参考文献】

  1. 高田暁 2018:低湿度条件下での乾燥感に関する被験者実験,第42回人間-生活環境系シンポジウム報告集,113/116.
  2. 高田暁2015:皮膚含水率の変動特性と個体差に関する検討,第39回人間-生活環境系シンポジウム報告集,175/178.
  3. 伊藤佳乃子,高田暁2019:低湿度環境における眼表面の状態と乾燥による不快感に関する研究 -コンタクトレンズ装用者と非装用者の比較-,第43回人間-生活環境系シンポジウム報告集,77/80.
  4. 硯愛画,高田暁2021:皮膚膨潤収縮モデルによる角層含水率分布の季節変動の解析,第45回人間-生活環境系シンポジウム報告集,81/84.
  5. S. Takada 2020: Influence of temperature and humidity of ambient air on sensation of dryness during respiration, Journal of the Human-Environment System, Vol. 23, No. 1, 31/43.
  6. S. Takada 2021: Study on the lower limit of indoor humidity subject, Experiments on psychological responses, Indoor Air, Vol. 31, No. 1, 250/263.