No.14 2021年10月
渡邊 慎一(大同大学)
日本の冬の風物詩といえば「こたつ」ですね。現在、「こたつ」がどのように使われているのか、その実態を調査しました。
総務省統計局が5年毎に実施している調査によると、昭和49(1974)年〜59(1984)年までは全国の「こたつ」の普及率は90%を越えていましたが、平成に入ると低下し、70〜80%となりました。この間、エアコンは急速に普及し、昭和44(1969)年には普及率が6.8%だったものが、平成16(2004)年には86.9%、平成26(2014)年には90.0%に急増しました。
さらに詳しく調べるため、平成23(2011)年にインターネットを使って全国の「こたつ」の使用実態を調査しました。平成23(2011)年時点において、全国の「こたつ」の普及率は64.3%でした。どうやら、エアコンの普及とは逆に、「こたつ」は徐々に使われなくなってきているようです。都道府県別に見てみると、普及率が高かったのは福島県(83.2%)、島根県(82.1%)、長野県(80.3%)などでした。一方、普及率が低いのは北海道(23.6%)、沖縄県(28.8%)、東京都(40.0%)などでした。北海道で「こたつ」の普及率が低いのは、「こたつ」のような採暖ではなく住宅全体の断熱性能を上げて暖房で暖かく過ごしているためでしょう。
次に「こたつ」でどう過ごしているのかを聞いてみました。最も多かったのは「テレビを見る」(92.1%)で、次いで、「くつろぐ」(78.2%)、「新聞や本などを読む」(68.0%)、「食事をする」(59.9%)、「団らんをする」(57.6%)などでした。家でのんびりしている様子が伺えます。次に「こたつ」の良いところを聞いてみました。最も多かったのは「暖かい」(86.8%)で、次で「くつろげる」(74.9%)、「寝ることができる」(52.9%)、「家族団らんができる」(48.7%)などでした。一方、気になるのは「こたつ」の嫌なところです。最も回答が多かったのは「掃除をするとき邪魔になる」(60.7%)でした。次で「一度入ると出たくなくなる」(55.7%)、「スペースを取る」(41.7%)、「掛け布団が汚れる」(32.7%)などでした。
それでは各地で「こたつ」はいつ使い始めて、いつ使い終わっているのでしょうか? 「さくら前線」にヒントを得て、アンケート結果から「こたつ前線」を作ってみました。「こたつ」を使い始める日は、全国平均で11月30日、「こたつ」を使い終わる日は4月20日で、その期間は141日でした。ちなみに、「こたつ」使用期間が最も長いのは長野県(飯田)で、11月16日から6月2日までの198日でした。なんと、1年の半分以上「こたつ」を使っているということが分かりました。一方、最も短いのは沖縄県(名護)で、12月21日から3月13日までの82日でした。年末に「こたつ」を使い始めて、3月にはもう「こたつ」を仕舞ってしまうようです。 「こたつ」をいつ使い始めていつ使い終わるのか、実はこの研究は、50年ほど前にも実施されています。その頃は電気こたつではなく炭こたつの時代です。その研究結果と比べると、全国平均で「こたつ」を使い始める日は3日早くなり、使い終わる日は23日遅くなっています。昔よりも1ヶ月ほど「こたつ」を使う期間が長くなっているのです。「こたつ」の熱源が炭から電気に変わったり、生活スタイルや住宅の断熱性能が今とは異なりますので一概には言えませんが、現在の方が、より暖かい環境を求めているといえるのではないでしょうか。
【参考文献】
- 渡邊慎一, 堀越哲美 2015: 日本各地における炬燵の使用実態と 「炬燵前線」 の推定, 人間と生活環境, 22(1), 9/20.
- 渡邊慎一, 堀田安佐, 堀越哲美 2010: アンケート調査に基づく炬燵の使用実態と使用終了時期の特定, 人間と生活環境, 17(2), 81/87.
- 江端洋行, 渡邊慎一, 石井仁 2013: 炬燵の普及率ならびに併用される暖房機器の全国調査, 人間-生活環境系シンポジウム報告集, 37, 211/214.
イラスト:浦川 京子