Vol.19 2022年3月
佐藤 健(実践女子大学)
ノルディックウォークは、両手で専用のポールを突きながら歩くウォーキング方法です。スキーのクロスカントリーの選手が夏の間の体力維持・強化トレーニングとして行っていた「スキーウォーク」が始まりとされます。
通常のウォーキングの効果に加えて、2本のポールを使うことで、肩甲骨周りの僧帽筋、上腕の筋肉の活動が増えます。前進する際の歩行の安定性として左右の加速度変位が小さくなります。左右にふらつかないで、前へ進むことができます。ポールを地面に突くことによって、安定した遊脚期が得られ、歩幅が増加する歩容が得られます。
同じ距離を同じ歩行速度で健康運動をするとしたら、ノルディックウォークは、1割程度の酸素摂取量が増加します。ノルディックウォークを10日行うとすると、11日分の通常歩行運動と同じ消費カロリーとなる皮算用です。
さらに、屋内のランニングマシーン(トレッドミル)上での平面での歩行運動と屋外のお散歩では、路面環境が変化します。屋外では、全くの平面ではないため、筋活動は、自然と増加します。特に、つま先を上げるために働く前脛骨筋の活動を意識しないでトレーニングすることができます。つま先を自然に上げることができない場合は、部屋内のケーブルに足を取られてケガをする危険も増加します。
季節のいいころに、屋外でのノルディックウォークは新しいエクササイズと言えます。最近は、パーキンソン病、股関節症の方々にも取り入れられてきています。特に、水中ノルディックウォークは、体の周りに水があるため、さらに転倒しづらい安定した歩行が可能となります。浮力による免荷も得られ、膝や股関節に心配がある方もプールでの歩行を楽しめるようになりました。
【参考文献】
- Takeshi Sato, Yuumi Kitanaka, Mizuki Nakajima 2019: Effect of nordic pole walking with Visual Analog Scale for time course in Parkinson’s disease, Journal of Parkinson’s Disease, vol. 9, 149
- Takeshi Sato, Mizuki Nakajima, Macky Kato, Shoji Igawa 2017: Effect of Pole Weight on Nordic Walking, International Journal of Sport and Health Sciences, Vol.11, 676/680
- Takeshi Sato, Takayuki Watanabe, Masami Miyazaki, Macky Kato 2011: Analysis of EMG Activity During Nordic Pole Walking in Outdoor Fields, The Fourth International Conference on Human-Environment System, International Conference on Human–Environment System 5th ICHES 2011, 433/437
イラスト:浦川 京子