Vol.28 2023年4月
橋本 剛(筑波大学)
もうすぐゴールデンウィーク。桜の花も散り、これからは夏に向かって日々気温が上昇していく季節になります。気候変動やヒートアイランドの影響でしょうか、夏の暑さは年々厳しくなっているように感じますね。熱中症の危険性も世の中にかなり知られるようになり、暑い日には無理をせず上手にエアコンを使用することが推奨されています。とは言え、電気代も年々高くなり、家計への影響も気になるところです。そこで、今年は皆さんの家でも緑のカーテンを育ててみませんか?というのが、今回のお話です。
アサガオ、ゴーヤ、ヘチマ、フウセンカズラといった、所謂つる性の植物でつくる緑のカーテンは、夏の風物詩の一つとしてすっかり定着したのではないでしょうか。夏の暑さ対策である緑のカーテンには、日差しを遮ってくれる効果や水分が蒸発することで熱を奪ってくれる効果などで室内に侵入する熱を軽減してくれるので、部屋の温熱環境を直接的に改善する効果が期待できます。しかも、それだけではなく、窓辺に緑のカーテンがあることで、その視覚効果によって同じ室温でもちょっとだけ涼しく感じられる、と言ったら驚かれますか?実は、緑のカーテンがある方が同じ室温(体感温度)でも心理的に涼しく感じる、つまり、緑のカーテンが窓からの風景を見た目に涼しくしてくれることが、実験によって確認されています。
東日本大震災の時に建設された応急仮設住宅地でも、多くの方が緑のカーテンを育てていました。家の周りの植物の管理状況は、住人の方々がお元気かどうかを教えてくれていました。また、日々生長する植物は、ちょっとした会話のきっかけにもなり、コミュニティーの形成にも一役買ってくれていました。この様な、広い意味での住環境改善効果が緑のカーテンには期待できます。
どうでしょうか?今年の夏は、皆さんのご家庭や職場でも緑のカーテンづくりにチャレンジしてみませんか!?
【参考文献】
- 談暁雪,橋本剛,豊川尚,伊藤帆奈美 2012:福島県の応急仮設住宅における緑化の実態調査,第36回人間-生活環境系シンポジウム報告集,75/78.
- 加藤真司,桑沢保夫,石井儀光,樋野公宏,橋本剛,小木曽裕,持田太樹 2013:緑のカーテンの有無が人体の心理反応に及ぼす影響,日本緑化工学会誌,Vol.39,No.1,3/8.
- 加藤真司,石井儀光,桑沢保夫,橋本剛,栗原正夫 2016:視覚刺激としての緑のカーテンが室内温熱環境評価に及ぼす影響,日本建築学会技術報告集,第22巻,第51号,559/564.
イラスト:石松 丈佳(名古屋工業大学)、久米 孝典(名古屋工業大学)