コロナ禍が気付かせてくれた換気の大切さ(2) ~窓を自由に開けられることの意味~

Vol.39 2026年5月

種市 慎也(横浜国立大学)

 前回のコラムでは、成育環境としての課題、そしてこれからは「質」が求められる転換期を迎えていることを述べました。今回は、「窓を自由に開けられること」の意味について考えてみたいと思います。

皆さんの過ごす場所では、窓を自由に開けられるでしょうか?

 なぜ当たり前のことを問うのかと感じる方もいるかもしれません。しかし、保育施設においては、これが決して当たり前ではないのです。

 コロナ禍では、様々な施設で窓開け換気が励行されました。保育施設においても例外ではなく、夏季であっても窓を開けながらエアコンを併用する運用が多くみられました。横浜市内の保育施設を対象とした実測調査では、窓開け換気の実施によりCO₂濃度が改善し、室温も概ね適切な範囲に保たれていることが確認されました。また、幼児・保育者の鼓膜温度(≒深部体温)も概ね37℃前後で推移し、熱中症リスクが低い状態であったことが分かっています。

※一部の施設では電気料金が約1.5倍に増加しており、エネルギー消費の観点では課題が残る

 一方で、すべての保育施設が自由に窓を開けられるわけではありません。駅ビル内の保育施設では、排煙窓しか開口部がなく、日常的な換気利用が禁止されていました。コロナ禍においてもこの状態が続いており、極めて大きな問題でした。そこで、玄関扉上部に換気窓(欄間窓)を新設したところ、冬季の換気量が117~517m³/h改善されました。これにより、保育活動中のCO₂濃度は低減し、保育者の心理的負担が軽減されたという現場の声も得られています。

 保育中の活動強度も換気を考える上で重要な視点です。保育室では、幼児・保育者ともに平均1.7METs以上の活動強度が確認されており、これは一般的な換気基準で想定する安静状態(1.0METs程度)よりも高い値で、それだけ呼気中のCO₂排出量も増えることを意味します。つまり、保育施設ではより多くの換気量が必要となるため、機械換気設備のみの運用では不十分な可能性が高いということです。

 窓が開けられるということは、単なる設備の有無の問題ではありません。それは、必要換気量を状況に応じて確保できる「柔軟な調整力」を持つということです。感染症対策をはじめ、様々な環境変動に対応するための重要な基盤とも言えます。

 「窓がある」ことと、「窓が使える」ことは違います。成育環境の質を考える上で、この違いを改めて見つめ直す必要があるのではないでしょうか。ここで改めて皆さんに問いかけます。

窓を自由に開けられますか?

【参考文献】

  1. 種市慎也, 胡怡賢, 大西達也, 田中稲子 2024:コロナ禍の換気を考慮した夏季の保育室環境と幼児・保育者の生理反応に関する研究, 人間と生活環境, 31(2), 57/65.
  2. 小西恵, 田中稲子, 種市慎也, 船場ひさお, 村上美奈子 2022:都市部に開設する複合型保育施設の換気量改善に関する研究 その1 ヒアリング調査に基づく開口部改修の課題整理, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 1397/1398.
  3. 胡怡賢, 種市慎也, 田中稲子, 小西恵 2022:都市部に開設する複合型保育施設の換気量改善に関する研究 その2 冬季の駅ビル内保育施設を対象とした開口部改修後の室内空気環境の実態, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 1399/1400
  4. 種市慎也, 胡怡賢, 田中稲子, 小西恵 2022:都市部に開設する複合型保育施設の換気量改善に関する研究 その3 冬季の換気量推定に基づく開口部改修の効果検証, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 1401/1402

イラスト:石松 丈佳(名古屋工業大学)、田代 翔馬(名古屋工業大学)