コラム「人間と生活環境」 第32回 『結露が起こる理由』

Vol.32 2024年5月

高田 暁(神戸大学)

 窓ガラスの表面で結露が起こることがあります。この理由として、「室内外の温度差が大きいから」という説明を耳にすることがありますが、正しい説明と言えるでしょうか?

 結露は、空気に含まれる水蒸気が、窓ガラスの表面などで冷やされ、気体として存在できなくなり、液体に変化し、水の粒が見えるようになるという現象です。水蒸気でいる時には見えなかった水分が、目に見える形に姿を変えるわけです。

 空気中に含まれる水蒸気の量には限界があります。その限界の量は、温度によって変わり、温度が低いと空気が含むことのできる水蒸気の量は少なくなります。

 冬には、あたたかく過ごすため室内で暖房をしますが、屋外の気温は低いです。このとき、窓ガラスの表面温度は、室内の空気と比べて、低くなります。例えば、室内の気温が20℃で外気温が5℃の場合、窓ガラスの室内側表面の温度は、理論上、9℃か10℃くらいになります。窓ガラスに触れている空気は冷やされますから、窓ガラスの表面で、空気中の水蒸気が液体へと変わりやすくなります。

 もし仮に、強力な除湿器があったとして、室内の空気中に含まれる水蒸気を取り除いたとします。このとき、結露は起こるでしょうか?答えは、NOです。結露水の源は空気中の水蒸気ですから、空気中の水蒸気の量を減らせば、結露が発生しにくくなります。

 結露を防止するための方法は、「表面の温度を高くする」と「空気中の水蒸気の量を減らす(湿度を下げる)」です。

 先ほど挙げた数字の例は、窓枠にガラスが1枚だけ付いている「単板ガラス」の場合ですが、2枚のガラスの間にわずかな空気層を設けたものを窓枠に付けた「複層ガラス」の窓の場合、上と同じ気温の条件でも、窓ガラスの室内側表面温度が15℃か16℃くらいになり、結露の可能性がぐっと下がります。

 一方、結露の原因となる水分は、人間の吐く息や皮膚からの水分蒸発のほか、炊事・入浴などの生活行為により発生するものです。冬は外気に含まれる水分量が少ないことが多いので、適度に換気を行うなどして、室内の湿度を下げることも、結露の可能性を下げてくれます。

 冬に建物内で結露が発生するときに、室内外の温度差が大きい場合が多いのは確かですが、温度差が直接の理由ではありません。窓ガラスの表面で結露が起こるのは、「窓ガラスの表面温度が低いから」と「空気中に含まれる水蒸気の量が多いから(室内の湿度が高いから)」の両方です。

 冷たい飲み物を入れたグラスの表面の結露が起こる理由も、上と同じように説明できます。

【参考文献】

  1. 船本正太,高田暁ら 2017:住宅全館の熱水分移動解析による非暖房室における結露性状の予測,第41回人間-生活環境系シンポジウム報告集,99/102.
  2. 長野洋太,高田暁 2018:半地下空間における結露性状に関する研究-地盤内水分の影響を考慮した解析モデルによる対策の検討-,第42回人間-生活環境系シンポジウム報告集,31/34.
  3. 谷口桂悟,高田暁ら 2010:冬季における室内湿度および居住者の室内湿度に対する評価の実態,日本建築学会近畿支部研究報告集(環境系), 第50号,301/304.
  4. 高田暁 2013:乾燥感と室内温熱環境条件に関する基礎的研究,日本建築学会環境系論文集,第78巻,第693号,835/840.

イラスト:石松 丈佳(名古屋工業大学)、田代 翔馬(名古屋工業大学)